対話型鑑賞法を子供の勉強にどう活かしたのか?

週末、久しぶりに、小学三年生の娘のお勉強に立ち会うことにしました。

彼女にとって、“じっくり読み解く”ということが、いかに難しく、“読み解く力“が、どれだけ、テストの点に影響するのかを、まじまじと思い知らされました。

あるテキスト問題を解いては、答え合わせをするということを繰り返していたのですが、

「凡ミスが多い!問題を解くのが遅い!何度も同じミスを繰り返す!・・・」

もうお互い、ストレスを感じ、早くも、噴火寸前の時・・・

「あっ、“対話型鑑賞法”を活かそう!」と思い立ったのです。

これは、私たち親子にとって、本当に素晴らしい!!体験でした。

◆“対話型鑑賞法”とは◆

日本では、20年前から、教育普及プログラムの一環として、美術館や、学校教育現場、医療、福祉などに導入されました。

今では、ビジネスの現場でも、「問題解決力」「コミュニケーション力」などのビジネススキルを磨くことができるため、社内研修に取り入れたりと、様々な導入事例が増えています。

もともと、1980年代半ばに、アメリカのニューヨーク近代美術館で子ども向けに開発された美術の鑑賞法で、英語ではVTS(Visual Thinking Strategies :ビジュアル・シンキング・ストラテジー)と言われています。

これは、「思考能力」「対話能力」の向上を目的に実践される、対話による美術作品の鑑賞法ですが、従来の美術鑑賞と異なる点は、美術の知識を介さずに、作品を観た時の感想や、そこから想像されることなどをもとに、グループでの対話を通じて鑑賞体験を他人と共有する点です。

「想像力」「自分で考える力」を育てること、自分の考えを「話す力」や、他人の話を「聴く力」といった“コミュニケーションの能力”を育てることが大きな目的とされています。

私も、実際、この対話型鑑賞法を七年前に体験させていただきました。

1枚の大きな絵画を20名ほどの人たちと鑑賞し、意見や感想を述べるのですが、

当初は、私の、発言力のなさ、思考力のなさ、コミュニケーション力のなさに気付かされ、愕然としたことを今でも覚えています。

しかし、一番驚いたことは、1枚の絵画を通じて、たった30分ほどの対話型鑑賞ワークをする前と後で、全く違う絵画に見えたことです。

ちゃんと、絵画をみていたようで、みていなかったのですね。

その“対話型鑑賞法”は、ライフスタイルに活かせるということを知り、これまで、たくさんの方々にご紹介してまいりました。

先日、小さなお子様をもつお母様に受講いただいた、アートライフスタイリストの中西やえか先生の講座の中でも、時間の都合上で少しだけでしたが、“対話型鑑賞法”を体験できるワークが紹介されていました。

では、実際、この”対話型鑑賞法”を子供の勉強にどう活かしたのか?を、私たち親子の体験を通してお伝えさせていただきます。

以下気になる3つの課題を“対話型鑑賞法”で、どのように解決したのか、まとめてみました。

◆凡ミスが多い!!◆

答えを導いた理由が、浅はかで、凡ミスが多い。答えをどう導いたのかを聞くと、説明することを嫌がり、うまく答えることができない。

考えられる原因:早く正しい答えを出すことが何より重要だと思っている。

◇対話型鑑賞法から学ぶ解決策:思考のプロセスをたどる!

なぜそう思ったのか?気づいたことは何か?どう考えたのか?

子どもの発言を丁寧に拾いながら、対話をとおしてひとつひとつ、なぜ間違えてしまったのかを探っていきましょう。

◇対話型鑑賞法から学ぶ解決策:解答スピードを気にしない!

一刻も早く正答を見つけなければならないという強迫観念は取り除いてあげましょう。すぐに正解できなくてもいいのです。

どれだけ時間がかかるかは問題ではありません。頭を使って考えた時間そのものが大切な財産となるのです。

◆結果◆

対話をすることで、親子共に、課題が明確になり、解決方法がわかるので、お互い無駄にストレスを抱えることがなくなります。

子供も、よく考えて発言するようになるので、“思考力”が鍛えられるように思いました。

また、説明する力が長けてくるので、“表現力”が身に付くことも期待できます。

最も良かったのは、対話が増えることにより、お互いの考えが、より深く理解でき、親子のコミュニケーションが豊かになり楽しく学習することができたことでした。

◆問題を解くのが遅い!◆

課題:1つの問題にとても時間がかかる。

考えられる原因:一度、わからない!難しい!と思ってしまうと、思考が止まってしまう。さらに、手も止まってしまう。

◇対話型鑑賞法から学ぶ解決策:思考のプロセスをみえる化する!

手を動かすことが論理的思考を刺激し、表現力を高めるとよく言われています。

まずは、親が、子どもの発言を、図にしたり、メモに書いたりして見える化して教えてあげてください。すると、子どもも自然にそれをまねるようになるそうです。

◆結果◆

見える化をすることにより、とてもわかりやすいので、簡単に解けることがわかると、顔色がパッと明るくなり、とても喜んでました。それをみると、私も嬉しくなるのです。

◆何度も同じ間違いを繰り返す!◆

●課題:何度も同じ間違いを繰り返す。

●考えられる原因: 大人が教えている?自分で考えていない。わかっていない。

◇対話型鑑賞法から学ぶ解決策:間違いを恐れない!

はじめにたどりついた答えが正解ではないことを、恐れない。何度つまずいてもいい。思考のプロセスに誤りはありません。つまずきは、新たな思考の飛躍につながる大きなステップと考え、前向きに捉えましょう。

◇対話型鑑賞法から学ぶ解決策:教えない!

親が教える立場に立ってはいけません。子どもと一緒に試行錯誤しながら、ともに歩んでいく姿勢を保ちましょう。私たちにできるのは、ファシリテーターとして、対話をとおして子どもの考えを引き出すことです。あくまでも主人公は子どもです。親はサポート役に徹しましょう。

◆結果◆

私自身、何度も同じ間違いをすることを叱っていましたが、そこを叱ることに全く意味がないことに気づきました。子どもが自ら、どうして間違えたのかを考え、克服させるには、どのような対話をしたらいいのか?を考えるようになりました。そして、子供は、2、3回同じ問題を自分で解いてみることにより、 同じ間違いをすることはなくなっているように思います。

勉強を見ながら、「この天気のいい週末に、この子と、いったい、なんのために、勉強をしているのか?」 と考えさせられました。

「100点をとるスキルなのか?ノウハウなのか?」

「いったい、私は、この子にどうなって欲しいのか?」

「この子は、どうなりたいのか?」

そんなとき、以下の言葉が心に染みました。

「人生において、正解はひとつだけではない。たとえ途中で失敗しても、決して無駄にはならない。結果だけでなく、過程も大切にする親の姿勢が、必ず子どもにも伝わるはず。それはきっと、子どもが学びを深めるうえでも、人生を歩むうえでも、大きな糧になる。」

参考資料:学力を伸ばす美術鑑賞法よりhttps://www.tankosha.co.jp/ec/products/detail.php?product_id=1764

それから、翌日、テストが、たまたまあったようで、娘は、なんと!!100点満点を取って帰ってきたのです。それも、娘の最も苦手な教科のテストでした。「なぜ100点が取れたの?」と聞くと、”じっくり読む”ことを実践したというのです。「え?それだけ?」と聞くと、「それだけ。ママありがとう。」って言ってました。”対話型鑑賞法”は素晴らしい!

*対話型鑑賞法については、入門講座でもご紹介しています。


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