名建築デザイン&アートスポットを巡る in 広島

「広島」という地名を聞いた時に、真っ先に思い浮かべるものはなんでしょうか?

世界遺産の「厳島神社」、「原爆ドーム」。

はたまた、豊富なグルメであったり、広島カープであったりするかもしれません。

実は広島は「名建築デザイン&アートスポット」が数多く集まる地というもう一つの顔を持っていることをご存知でしたか?

今回はそんな広島の知る人ぞ知る魅力をご紹介いたします。

建築・デザインの巨匠が残した「アートスポット」の旅

2019年初秋「名建築デザイン&アートスポット」 としての広島の魅力をお伝えするべく、建築・デザインの巨匠が残した「アートスポット」を巡る研修ツアーが開催されました。

4月に発売されて以降、話題となり重版も決定した本『芸術家たち 建築とデザインの巨匠編』の著者・河内タカさんをゲストに迎えた広島ツアーのレポートをお届けいたします。

まずはじめに訪れたのは、重要文化財である「カトリック幟町教会 世界平和記念聖堂」です。

村野藤吾が手掛けたこちらの協会。 工事も終わり、運よく大聖堂と小聖堂と地下聖堂を全て見ることができました。

自然とため息が出るほどの建造物、圧巻でした・・・

世界で最初に被爆した広島の地に平和のシンボルとして献堂されたカトリック教会。

世界各地からの寄付により、5年の歳月を重ねて1954年8月6日に完成しました。

設計は当時のデザイン設計の第一人者であった村野藤吾が担当。

聖堂入口の上部の7つの秘跡を表した彫刻は円鍔勝三の作品です。

リノベーションを終えたばかりの世界平和記念聖堂…

河内 タカさんの投稿 2019年10月8日火曜日

つづいて「アストラム白島駅」を車窓から見学。コンペで建築家を選び建設されたこちらの駅。デザインに定評のあるアストラムの駅の中でも、特異な存在感をはなっています。

アストラム白島駅。シーラカンス設計。

次に訪れたのは、話題となった映画「君の名は」で登場する学校の実際のモデルとなった「 広島市立基町高等学校 」。こちらは原広司の設計です。

再び移動し「基町高層アパート」を見学しました。基町高層アパートを設計した大高正人は ル・コルビジェの元で学んだ前川國男の弟子。この基町高層アパートにもコルビジェの影響が見受けられます。

ユニット化された住戸などに、ル・コルビュジェの影響が垣間見える。

緑の公園の中にひっそりと佇む「ひろしま美術館( 与謝野久/日建設計 )」、「広島県庁(日建設計)」 を通り、

現存する被爆建物の一つである、「広島市指定重要文化財旧日本銀行広島支店(長野宇平治設計)」を見て、「イサムノグチの平和大橋」を確認し、いざ「おりづるタワー」へ。

おりづるタワーは三分一博志の設計。
ひろしまの丘と命名された屋上の展望台からは平和記念公園を一望できます。折り鶴をテーマにした体験ゾーンやギャラリー も併設しています。

上から見る原爆ドーム、今はなき広島市民球場を含む広島市内を一望できる眺めは素晴らしいものでした。

現地で折った折り鶴は、そのまま三分一博志のデザインの一部となりました。

そのあと、「原爆ドーム(ヤンレツル設計)」を見学し、

1週間前に、空間デザイン賞を受賞し話題になった、「広島平和記念資料館(丹下健三設計)」へ。

子供の頃から平和教育を常に受けてきた広島出身の方も、広島の歴史を振り返るツアーに参加することで、今回は特別に込み上げてくる思いがあったそうです。

「西平和大橋(イサムノグチ設計)」を通り、建築に込められた 未来への熱いメッセージとエール、そしてイサム・ノグチと丹下健三の深い友情を知りました。

実際の建築物を訪れて、設計した建築家のエピソードに触れることができるのは、ガイドツアーならではの醍醐味ですよね。

つづいて、スケルトンな消防署「広島市消防局 西消防署(山本理顕設計)」を通り、 あの、MoMA(ニューヨーク近代美術館)の改築を手がけた、 谷口吉生設計のまるで美術館のような、「広島市 環境局 中工場」へ。

広島市環境局中工場の設計は谷口吉生。ここは市街地から少し離れていてなかなか来づらいところだが、丸亀猪熊弦一郎現代美術館やMoMAを手がけた建築家によるものだけに、ごみ処理施設なのにまるで美術館のような精巧さと際立った美しさがある。平和記念館…

河内 タカさんの投稿 2019年10月7日月曜日

「ウッドエッグ(三分一博志設計)」を見たあとは、湯来へと移動しました。

湯来では「アップルを魅了した椅子」が生まれた場所、マルニ木工を訪れました。

アップルを魅了した椅子「HIROSHIMA」を生んだマルニ木工工場見学 & 河内タカさんトークイベント

米カリフォルニアにあるアップルの本社では、マルニ木工の手掛ける椅子「HIROSHIMA」が利用されています。その数なんと数千脚。まさにアップルの美意識を捉えた特別な椅子が 「HIROSHIMA」なのです 。

今回、特別にその工場を見学させていただきました。

シンプルながら完成された 深澤直人さんのデザイン、 そして、それを支える高い木工技術。見飽きることのない不朽の名作の一つです。

その後は、マルニ木工のショールームのあるLECTへ移動。

蔦屋書店さんにご協力いただき、広島T-SITEにて、今回のツアーも一緒に巡って頂いた河内タカさんトークイベントとなりました。

一日のツアーを総括するようなイサム・ノグチなどの建築家のエピソードを織り交ぜたトークは、広島から世界へと広がっていきます。

ツアーの心地よい余韻を残しながら、華やかなアフターパーティーで1日が幕を下ろしました。

この旅は、単なる広島観光や研修ツアーにとどまらず、世界各国の人々が志を一つに寄せる世界唯一の被爆都市に残された建築・デザイン・アートスポットを通じて、

「ライフスタイルの本質とは?」「豊かさとは何か?」を考えるきっかけになったのではないでしょうか?

広島を訪れたことがある方も、まだ広島を訪れたことがない方も、

「知っている」と「実際見た」とでは大違い!ぜひ「建築デザイン&アートスポット」に足を運んで、色褪せることのないデザインと、そのメッセージに触れてみてくださいね。

<ゲストプロフィール>
河内 タカ

高校卒業後、サンフランシスコのアートカレッジへ留学し、卒業後はニューヨークに拠点を移し、アートや写真に関する展覧会のキュレーションや写真集の編集を数多く手がける。
三十年に渡った米国暮らしの後、2011 年 1 月に帰国。自身の体験を通したアートや写真のことを綴った著書『アートの入り口 アメリカ編』、及び『ヨーロッパ 編』(共に太田出版、2016 年)を刊行。
現在は、京都に本社を置く便利堂の海外事業部を統括し、写真の古典技法である「コロタイプ」を国際的に展開すべく様々なプロジェクトを行なっている。
また、日本経済新聞紙の『美の十選』をはじめ、「and Premium」や「SEIN」(SIGMA) などへ定期的に執筆を行なっている。

芸術家たち 建築とデザインの巨匠
編著 : 河内タカ
定価 : 1,500円(+税)


著書『アートの入り口』や雑誌『&Premium』の連載
日本経済新聞のコラムなどで知られる著者・河内タカが20世紀の現代建築とモダンデザインの礎を築いた巨匠31組の偉大な足跡を洒脱なエッセイで紹介していきます。学生から、教養として建築やデザインを学びたいと考えるビジネスパーソンまで、多くの人の知的好奇心を刺激しその世界へと誘う入門書の登場です。

POINT 1: 建築とデザインの歴史が、この一冊でまるわかり
POINT 2 : ユーモアあふれるイラストとブックデザイン

冬には日本を飛び出して「名建築デザイン&アートスポット」を巡る旅、北アメリカ編を開催いたします!

アメリカ東海岸はモダニズム建築&現代アートの宝庫。その歴史のダイナミズムと魅力を余すところなくお伝えいたします!

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