天才画家・山下清作品のここがすごい!

SONPO美術館で開催中
国民的画家・山下清展「百年目の大回想」

 

 

山下清は放浪の天才画家として知られ、その波乱に満ちた生涯は映画やテレビドラマにもなったので、美術ファンだけでなく、昭和世代の人たちの間では知らない人がいない程の有名人。
貼絵の山下清とも言われ、国民的大人気の画家です。

 

でも、映画やドラマの「裸の大将」のイメージが強すぎて、「天才画家って言われているけど、一体何が凄いの?」って思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、「天才画家、山下清作品のどこがすごいのか?」について
5つに絞って、お話しさせていただきたいと思います。

 

1.色紙で見事なグラデーション

 

清の場合は、色紙(いろがみ)を3mm位にちぎって貼っていきます。
色紙なので色が単調になり、色調の変化やグラデーションがつけにくいのですが、細かく細かくちぎって、少しづつ色を変化させることによって、見事なグラデーションを表現しています。

私たちは、油彩画や水彩画に慣れているので、色調の変化をつけるのは当たり前のような感覚になっていますが、これを色数の少ない色紙で再現すするのは、至難の業。

少ない色数の色紙で、どんな風にグラデーションを表現しているか、じっくり見てみてくださいね。

 

 

. 完成度の高さの秘密はこれ!

 

清の作品には、いろいろなところに 「こより」が使われています。

この こよりというのは、色紙を細くちぎって、細い棒のようにしたものです。

このこよりで立体的な線を表現したり、輪郭線に使うことで、作品の完成度がグッと上がります。ただでさえ細かい色紙を貼っているのですが、輪郭線や柄などの部分にもたくさんこのこよりが使われていて圧巻です。

私はこのこよりがどこに使われているんだろうと作品を見ていて、気の遠くなるような細かい作業の積み重ねに感動しました。

こよりは様々な作品で使われているのですが、特に「自分の肖像」と「栗」という作品のこよりの使い方は、立体感があって素晴らしいので、ぜひご覧くださいね。

 

▲イメージ図 : 「こより」はこんな感じ

 

 

 . 素材は色紙だけではない!

 

清の作品には色紙のほか、古い切手やチラシ、包装紙なども使われている作品があります。

当時、戦争が暗い影を落としはじめ、物資が手に入り難くなってこのようなものが使われたそうです。

代用品として使われた古い切手やチラシですが、それまで以上に立体感を表現できたり、作品としての厚みを出すのに効果的に使われました。

清の手にかかると何でも素晴しいものに変身してしまうようですね。

 

 

 . 貼絵で絵筆のタッチを表現

 

色紙を3mmより少し大きめにちぎって、細かくランダムに貼ることによって、絵筆のタッチのような感覚を表現している作品もあります。こんな感じを貼絵で表現 ↓

 

▲参考画像 (出典:西洋美術史WHO’S WHO モネの荒いタッチの表現)

 

印象派のモネやルノワールのような油彩画の絵筆の荒いタッチのような表現です。

貼絵で絵筆のタッチを表現できるって凄いですよね。

 

一方、3mm以下くらいの細かい色紙を貼って、色の濃淡やグラデーションが表現されている作品は、新印象派のスーラーの点描画のような印象も受けます。

 

 

▲参考画像(出典:西洋絵画史WHO’S WHO  スーラーの点描画)

 

点描画というのは、異なる色の小さな点を隣り合わせに置くことで目の中で混色され、遠くから見たときに色が混ざって見えるように描かれた作品です。

スーラーは、絵の具を混ぜると濁るので、この方法で絵を描いています。

清の貼絵も細かくちぎって貼ることによって、それと同じような効果が得られているのではないかと思います。

ぜひ、近くで見たり、ちょっと離れて見たりしてその効果を実感してくださいね。

 

 

5. こだわりのある忠実な再現

 

「金町の魚つり」という作品を鑑賞していたら、向こう岸の人が川に映り込んでいました。
その映り込みをよく見てみたら、洋服の色や柄、輪郭線まで忠実に再現されていてびっくり!
ここまでこだわって描いている清の凄さに感動しました。

この他にも写り込みの表現がされている作品が何点かありましたが、この作品私のお勧めです。

 

「アートってよく分からない」とか、「作品のどんなところを見たらいいの?」って思っていらっしゃる方も、上記のような視点で作品を見ていただくと、いろいろな発見があると思いますよ。

 

基本的に作品は自分の好きなように見てOKですが、「天才画家山下清は何が凄いの?」と思っていらっしゃる方は参考にしていただけると嬉しいです。

 

今回は、貼絵の注目ポイントをご紹介をさせていただきましたが、会場にはペン画、水彩画、油彩画、陶磁器の絵付けなど様々な技法で制作された作品がたくさん展示されています。

私は「山下清=貼絵」のイメージでしたが、貼絵以外の素晴らしい作品もたくさん紹介されていて、テンション爆上がりでした。

 

作品が盛り沢山ですので、時間はいつもより多めに余裕を持ってお出かけくださいね。

ぜひ会場で、山下清の作品の素晴らしさご堪能ください。

 

▲スイスの町の作品のタペストリー

 

 

山下清展 100年目の大回顧展

https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2022/yamashitakiyoshi/

 

開催概要詳細情報

🔹展覧会名

生誕100年 山下清―百年の大回想

🔹会期

202年年6月24日(土)〜9月10日(日)

🔹会場

SONPO美術館  〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1

🔹休館日

月曜日

🔹開館時間

午前10時〜午後6時(最終入館は午後5時30分)

🔹観覧料

一般1,400円、大学生1,100円、高校生以下無料

 

 

 

<この記事を書いた人>

染矢 由美子

アートライフスタイリスト・マスター インテリアコーディネーター
インテリアプランナー設計事務所で 23 年間、住宅・店舗・病院の新築やリフォームなど1200 件以上の設計・施⼯全般にわたり担当。2012 年 Add PURE として独⽴し、現在に⾄る。⾃⾝の運命的な⼀枚のアートとの出会いで、アートがある暮らしの⼤切さを⾝をもって実感し、それ以来アートの普及活動に⼒を⼊れている。インテリアコーディネーターならではの視点で、顧客の要望と空間のイメージに合ったアートを提案し好評を得ている。

 

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