インタビュー:川田画廊
インタビュー:川田画廊
神戸で歴史のある川田画廊の川田代表に、神戸のアート状況、これからの抱負、そしてオンラインイベント: ALSMA EXPOを控えて オンラインギャラリーについてお話いただきました。
―川田画廊さんの創業はいつですか?
≪川田画廊 代表取締役 川田 泰≫
創業58年くらいになると思います。
私の祖父が大丸の美術部の責任者をしておりましたが、退職をしたとき美術の仕事が好きだったので画廊を始めたんですね。当時高度成長期だったので、美術品の需要も多く画廊も大きくなり、私の父親があとを継ぎました。
その後の地震で財産をすべて失ってしまうのですけど、今はなんとか回り出したかなというところです。
― 震災を乗り越えてたいへんでしたね。
子供のころ、美術品に関してはどんなふうに感じていましたか?
家にはいい美術品がたくさんありました。だからといって子供の頃はそんなに「美術が好き」とかはありませんでしたね。ただよく展覧会には連れていかれました。
― 自然に家の中にあるということで美術品に興味もあったでしょうね。
K)うん、まあ、あったかなあ・・。ただ家具などいい物を置いてあったというのは大人になってからわかりますよね。古いけどいいものだった。子供の頃はわからなかったですけど。そういのは良かったかなと思いますよ。
― さて、ギャラリーでは、基準とかも含めてどのようなものをご紹介されていますか。
うちはデパート卸しがメインなので、デパートが好むものを選ぶんです。基本的にデパートの好むものというのは名前が大きなもの。昔だと文化勲章をもらっている作家だとか人間国宝であるとか、それがブランドとなりますので、そういうものを納めていました。
今は時代もあって、文化勲章のかたの掛軸が家にあるとか、それはそれで素晴らしいことなんですけど、若いひとはそういうことはなんとも思わない、もっと現代アートに寄ってきているんです。だから在庫も現代アートに寄せていってますね。
― そうなんですね。では個展などのご予定はありますか?
はい、次は10月に日本画の3人展をやります。美人画です。今流行ってますよね。ただ、流行りに乗っている作家というよりは、根本的に美人画というものをきちんと勉強した根っこのある作家を私の目で見て選択しています。
― 美人画を描く土台のある作家さんから生み出された現代アートを紹介していただけるということですね。
そうです。
― どんな美人画展になるのか、それは楽しみです!川田画廊さんは、アートフェアなど地域でアートの取り組みを行っていらっしゃいますけれども、どんな思いで関わってこられていますか?
うーん・・神戸というのは外から見るのと中に住んでいるのとは違うかもしれません。外からみると神戸はイメージがすごく良いと思うのですけれど、中に住んでいるとそれほど先進な取り組みをしているわけでもないんですね。
例えば医療産業都市ポートアイランドの理化学研究所に小保方さんというかたがいらっしゃったり、他はコンピュータの京もあったり・・・。
― へえ!
それらは意外と知らないでしょう?
― 知らないです。
つまり、実は神戸は医療の先進都市なんです。それをしっかり知らせることができれば、もっと人材も集まるし、海外からも「治療をするなら神戸」となると思います。そうなると国や市が発展すると思うんですがまだそこまでに至ってない。昔から、港町で外国商船が入ってきて、なんかちょっとオシャレ・・・みたいなのを引きずってきている。
― 私のイメージもそうですね。
例えば、ワールドやJavaというファッションブランドはあるんですが、それらはひと昔前のブランド、新しくファッションブランドが出てくるわけでもない。
実際、神戸はユネスコデザイン都市に認定されているんですけれども、デザインなら神戸に頼むといい、といった認知ではないんですね。
― なるほど・・・。
同じように、アートで神戸を盛り上げようという動き、イベントはたくさんあるんですよ。だけど「神戸といえばアート」というところまでまだ育っていない。
これらは行政の発信ではなく、私たち民間でなにか積み上げていかないとね。
それがアートマルシェというお祭りです。それが浸透していけば「秋といえばアートマルシェ、じゃあ神戸行こか・・」と観光に繋がる。そういうことを目論んでいきたい。
― 素敵な計画ですね。
公募展というのは、たくさんのアーティストたちがたくさん応募してくるんですね。そこでふるいにかけて何人かを展示するというのは、実をいうと仕組みとしてすごくいいんですよ。
なぜかというと、公募する時点では運営にお金がかからない。事務局を置く必要があるので審査料として三千円はいただきますが。
なにが重要かというと、これで情報が集まるんですね。
― ああ、そういうことですね。どんなアーティストがいるかとか、今どういう傾向になっているのか、ということですね。
そうそう。
今回公募を関西に限定しました。そのことで、関西の若手で頑張っている作家を集約するということができたわけです。それは私たちギャラリーからすればすごくいい情報なのです。
― アートマルシェやアートフェアなどに行くと確かに今の傾向がわかりますね。それは自然と公募によって情報が集まり、さらにはそれが集約され、ふるいにかけられて展示されているということなんですね。
はい。
自分で出かけて行って作家探すとなったら大変でしょう?
貸画廊なども、全てを自分の足で回るというのは無理です。
こうして情報が集まる場所になれば、恐らくアートの発信基地にもなり得るだろうと。
― なりますね。
アートで盛り上げるという企画に行政からお金が出ても、それで芸術祭行われてそこで終わる。
しかし、これはぜんぜんお金がかからずに情報が集約される。ここから一人でも世界的に有名な作家が出れば神戸はものすごく盛り上がる!
アートマルシェの公募から出てきた作家さんが世界的な作家になればね・・・それで私の人生は成功かなと(笑)。
― Art Live Kobeで会場を回っていて、若手アーティストさんの活躍の場として本当に良い試みだなあと思いました。アーティストさんと話していても、自分で自分の作品をプロモーションすることとか、お客さんから直にアドバイスをされるということがあったりと、とても喜ばれていました。
ありがとうございます。
― ところで、このコロナ渦。アートをおうちに飾りたいというお声も高まっていると聞きます。川田さんもそうお感じになりますか?
はい、確実に高まっていますね。家の設えを変えようかとか、暇もありますしね。
― 旅行も行けないし、そのぶんアートを買おうかと思われるかたもいらっしゃるのかなと。
そうですね。
― それで、アートのある暮らし協会では、アート業界でのDX、オンライン化を進めようということで、ALSMAを立ち上げました。
(資料を見て)これは正解だと思います。
― こういうオンラインに関してはどう思われますか?
そうですね。オンラインでいえば、Art Scenesという若いグループが頑張っているので、私たちはそこに作品を登録していたんですね。
まあ、実物を見ずに買うなんてどうかな・・・と思っていたんですけれど、コロナになってからオンラインでの売り上げがめちゃくちゃ伸びていますよ。
2年前に登録したのですが、忘れた頃に売れるというかんじです。
つまりみなさん結構WEBサイトを見ているんですよ。コロナになったから。
― おっしゃるように実物を見ずに買っていらっしゃるかたもいらっしゃるでしょうし、元々知っていてオンラインで検討されて購入されるというかたもいらっしゃるでしょうね。
はい。両方あると思います。
私たちが展覧会をしたときArt Scenesにも登録していましたが、注文が全国から入ってくるんですよ。
その注文したかたは絶対に店に来てみたわけではないと思うんです。10万くらいのものとはいえ、物を見ないで買うのか・・、とこちらが驚きます。そんなかんじです。
だから、オンラインの販売というのはやっておかないと、今の時代は。
― 私たちも「実物を見ないと」というお客様がいますから実際チェックしているんですけれども、オンラインもすごく需要があるということなんですね。
(オンラインは)カタログの代わりにもなるので。展覧会を見に来られて、この作家めっちゃいいやん、と言って1点買って帰られ、後に検索されて、「川田さんの所にはこの作家で他にもこんな作品があるんだ」と言われて「全部買うわ」と。全部で900万くらいでしたよ。
― ええ!
「マジすか!」ってなりますよ。
この場合は、オンラインで売れたわけではないですが、オンラインがあったからこそ売れたということですよね、カタログ的に。
― すごい!
すごいですね(笑)900万ですから。カタログがオンラインになっているという時代ですね、今は。
― 確かに自分がコレクトしている作家さんを見ていると、これもほしい、こんなのもある・・って。気持ちわかります。
ハマってしまうかたもいらっしゃいますよね。
― 今回ALSMAにもご協力いただけるということで、すごく心強く思っているんですが、この取り組みについてはどう思われますか?
これはめちゃくちゃいいですよ。
インテリア業界のひとたちに対して、私たちはインテリア絵画というジャンル分けをしていたんですけれども・・・つまり、美術品とインテリアみたいに分けて考えていたんですけれど、お客様はそんなふうに分けて考えていないんですね。好きなものを飾っているだけだから。
なので、インテリアを考えているかたたちにもちゃんとアプローチしなければいけないと思っています。
これも、オンラインで買うひとはいないだろうという先入観を捨てて、オンラインでできるのであれば願ったり叶ったりじゃないですか・・と私は思うんですけどね。
― そうですね。まだ、インテリアとアートって少し垣根があったりするところを取っ払っていきたいなと思います。
ALSMAでは、アートのイベントの商談なども積極的にやっていきます。アート自体が売れるということはもちろん、新しいサービスだったり、アート商材だったりが生まれていくということも視野に入れて作っていきます。いろんな業界を巻き込んでやれればいいなと。
― プロのかたたちが商談できる場として、コーディネーターさんたちへの紹介料をどうしたらいいのか等、なかなか難しいということもあったので、オンラインでは10%以上の紹介料をギャラリーさんにはご負担いただくと取り決めています。
決まっているほうがいいですね。とてもいいと思います。
― あとはなにかお知恵いただくとして成功の秘訣とかありますか?
そうですね、大きいところと組むことですね。・・・チームラボが参加されるんですね?
― はい、イベント内で基調講演をお願いしています。
なるほど。
― ほかにも基調講演はお願いしております。
いいですね、 素晴らしいです。
インテリアコーディネータのかたたちに、問い合わせのたびに個別で作品やアーティストステートメントなどを提出するのはなかなか大変だけれど、この中にカタログもはいっているということですね。
― はい。ボックス(ブース)を設定するところはギャラリーさんのほうでお願いするかたちになるんですけれども。
ボックスの中に画像を置けます。絵としては5点置けます。それ以上の場合は御社のサイトのほうへ飛ぶようにリンクを貼っていただき、そこで情報やカタログなどを入手出来るようにしていただければと思います。
そして、このボックスにはチャット機能が付いているんです。直接お客様からお問い合わせがそこで行われて返事ができます。さらにそこからすぐにオンラインのミーティング機能がついているので実際にアートをお見せしながら商談できます。
とても素晴らしいですね。楽しみですね。
interviewer
Discription : 竹中ミホコ
一般社団法人アートのある暮らし協会
「誰もがアートを身近に楽しめる豊かなニッポンへ」という理念を掲げ、 日本全国のアートのある暮らし普及へ向けて活動をしています。
アートの力で、1ランクアップのライフスタイルを手にするための情報、知識、スキル、人脈、環境などを一気に身に着けることのできるカリキュラムやサービスを提供しています。
2021年10月28日掲載
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