【アートマーケットの「今」が知りたい!】サザビーズ香港のSAKURAさんに聞きました!
【アートマーケットの「今」が知りたい!】サザビーズ香港のSAKURAさんに聞きました!
クリスティーズと並び、世界的に有名なアートオークション会社「サザビーズ」。世界各地に拠点を持ち、アートマーケットの形成に大きな影響力を持っています。
その中でも、今とりわけ勢いのある香港を拠点とする「サザビーズ香港」で働くSAKURAさんに、アートマーケットの現在・未来について、中国・香港の事情を中心にお話を伺いました。
桁違いの金額が飛び交うアートオークションの世界・・・少し覗いてみましょう~!
-SAKURAさんは、これまでどのような仕事をしてきましたか?また、サザビーズではどのような仕事に携わっていますか?
10年以上アートマーケットの現場で働いています。
アートの教育を受け、ギャラリー、そして台湾のオークションハウスで2年働き、その後香港へ戻ってギャラリーマネージャーを務めました。
そして現在は、サザビーズ香港に勤務し、マーケティングリサーチを行っています。クライアントを増やすために、ターゲットの選定を行ったり、年間戦略を練ったりしています。顧客開拓ですね。
ちなみに肩書は「クライアント・ディベロッパー」です。
―様々な立場からアートに携わってこられたのですね。
実は、香港のギャラリーをやめてから、1年間の休暇をとったんです。
日本、台湾、タイを旅行しながら、アートと文化をそれぞれの場所で探究し、とても幸せな時間を謳歌しました!同時に香港の様々なアートイベントにも参加しました。たとえば、クリスティーズやサザビーズの展示やオークションの他にも、アートフェアやバーゼルのアートショーなどです。
仕事以外でも、私の関心はアートに向いていますね。
-それでは本題ですが・・・最近のアートマーケットの現状を教えてください!
アートマーケットは近年どんどん拡大しています。
香港は特に、勢いがあります。インターナショナルなギャラリー(たとえばWhite Cube や、Galerie Perrontinなど)が集まり、著名なオークションハウスも、香港でビジネスをするために集まってきました。
同時に取引額も増えています。
近年の香港は、アジアの最大アートマーケット、トレードの拠点として、計り知れないほどの利益をもたらしています。
なぜ香港のアートマーケットが世界3位になったのか、理由はとても明確です。それは、TAXフリーの商港や市民税、輸入税など、税金が掛からないからです。香港には、美術品を購入した際に税を納めなければならない王室などがないのです。つまり、利益はすべて販売者のものなのです。
また香港ではないですが、去年行われたクリスティーズNYのオークションで、フランシス・ベーコンの作品(「ルシアン・フロイドの3習作」)が約1億4240万ドル(約141億円)で落札され、過去最高落札額を更新して話題になりました。
毎年、記録を更新しています。
-取引額が増えているということですが、それは客単価が増えたのか、購買人数が増えているのか、どういった要因があるのでしょうか?
これはまさにわたしの仕事に関する質問ですね。
クライアント・ディベロッパーは、いつも買い手のことを考えていますから。
買い手の数は増えていますよ。特に近年中国人の買い手が増えていて、今は世界のアートマーケットの70%を中国人の買い手が占めています。
これは中国の文化ともいえますね。彼らはお金を持っていて、購買力があります。中国人は、自分にお金があるということを見せつけたいのです。たとえ美術品について深く知らなくても、中国人はお金があれば美術品を買います。これは文化なんです。
オークションに関して言えば、いま中国人の買い手の間で競争が激化し、どんどん作品価格が高騰している傾向があります。
だから、世界中のギャラリーやオークション会社が今、中国・香港に集まってきています。
香港に集まるのは、先ほども言ったように、TAXフリーであることが大きな要因といえるでしょう。ほかの諸国と違い、香港ではTAXについて悩まなくていいのですから。
-いま、中国人のアートマーケットへの影響力がとても大きいんですね。今後は、アートマーケットはどのように変わると思いますか?
そうですね・・・中国美術はもちろん、韓国、日本やシンガポールの美術も増えてくるでしょうね。
まず中国の美術品の値段は上がり続けています。上限がありません。アート・バイヤーは中国美術を使ってギャンブル・ゲームを楽しんでいるのです。それが中国美術の市場価格をとてつもなく上げています。
またここ数年で、質の良い、たとえば日本の美術なども、決して安くはない値段でオークションハウスで落札され始めています。草間(禰生)は良いケースですよね。村上隆も。ほかにも、奈良美智や杉本博司、白髪一雄など、どんどん注目のアーティストが出てきています。
-では、SAKURAさんが思う「理想的なアートマーケット」はどのような形だと思いますか?
何が理想的か、というのは、なかなか言いにくいですね・・・まとめるのは難しいです。
あえて言うなら、健康的である、ということでしょうか。
健康的なやり取りが一番です。これまで一部の人々が、市場を作るため、作品の値段を上げるために、様々な手段を使って作為的にマーケットを動かしてきました。そうした場合は合理的なマーケットではないので、健康的(正常)な市場とは言えません。
理想的なアートマーケットを作るために一番大事なのは、売り手と買い手が健全な目的や姿勢で市場を作ることだと思います。
-考えさせられるテーマですね。ところで、現在アートを購入しているのはどのような方が多いのでしょうか?
富裕層、アートコレクターはもちろん、あとは銀行ですね。銀行はアートに投資しています。
彼らはアートがお金を生むことを知っているのです。
-やはりそうなんですね。でもアートは富裕層のみが楽しむのではなく、多くの一般消費者ももっと楽しんでいいと思っています。SAKURAさんはどう思われますか?
そうですね。これは良いポイントだと思います。
アートは誰かのためのものでなく、世界中のみんなのものです。ただ、同じ「アートを好む人」でも、その姿勢は様々です。
たとえばある人は、アートはお金を生むものと考えます。またある人は、アートをただ楽しんでいます。
両者は、アートに対する態度が大きく違うのです。
わたし自身はよく展覧会に行きます。アートを文化的に受け止めています。
アートにお金を使いはしますが、オークション・マーケットのように高額ではありません。お金をあまりかけずに、人生の楽しみとして、アートを楽しんでいます。
-アートライフの魅力は、どのようなものだと思いますか?
これも良い質問ですね!
今の時代、人生はストレスフルですよね。香港や日本だけでなく、世界的にそうです。沢山問題を抱え、解決しなければなりませんし、お金や災害、飛行機が落ちたり・・問題だらけです。
だからこそ、アートライフはとても大切だと思います。ストレスのある生活とバランスを取るためにも。音楽もわたしたちをリラックスさせてくれます。
でもアートライフを実現するにはまず、アートを知らなければなりません。
学ぶために教室やセミナーに行くなど、まずはどうやってアートを楽しむかを知ることも重要ですよね。美術館にはたくさんの素晴らしい作品が置いてあります。
しかし、たいていの人はそれをどう楽しめばいいかを知りません。それはもったいないことです。
アートライフを楽しむことは、今の時代、とても重要だと思います。
-アートライフから得られる恩恵は何だと思いますか?
人生を幸せにしてくれることだと思います!
アートによって、クリエイティブで質の高い人生を送ることができる。
アートは大切です。
―共感します!SAKURAさんは、わたしたちの活動についてはどう思われますか?
とても意味のあることだと思います。アートをプロモートする手段として、とても素敵な方法です。
そして、アートで人生を楽しくするというコンセプトが素晴らしいですね。
アートライフをより良いものにしようとしてくれている。
有益だし、新しいと思います。
成功を祈っています!
―とてもうれしいお言葉、ありがとうございます!アートの力で一人でも多くの人の人生を豊かにできるよう、今後も頑張ります!!
↓ SAKURAさんがギャラリー勤務時代に取材された新聞記事(香港・星島日報)
【関連情報 : アジア前衛美術@サザビーズ香港】
サザビーズS|2ギャラリー(香港)が2015年3月13日から27日に、同ギャラリーにおける初のアジア前衛美術をフォーカスした2つの展示を同時開催する。白髪一雄や元永定正などが代表する具体の作品を展示する「具体のレガシー」と、李禹煥(Lee Ufan)や河鍾賢(Ha Chonghyun)などが代表するDansaekhwa(単色画)の作品を展示する「韓国における単色の美学」。両展は日本と韓国の代表的な前衛作家たちによる50点を超える作品を一堂に並び、両国の現代美術における革命・運動の成果を見せる。
ARTcollectors’IN ASIA記事より
http://www.tomosha.com/asia/6172
-
Sakura WAI / 韋桜子さん
〔プロフィール〕
ギャラリー、台湾のオークションハウス、香港でのギャラリーマネージャーを経て、現在はサザビーズ香港に勤務。
Title : Client Developer
Company : Sotheby’s HongKong Limited
2014年08月18日掲載
新着記事
コラム月別記事一覧
- 2024年10月 (2)
- 2024年8月 (1)
- 2024年7月 (1)
- 2024年2月 (1)
- 2023年12月 (2)
- 2023年11月 (1)
- 2023年9月 (1)
- 2023年8月 (4)
- 2023年7月 (3)
- 2023年6月 (1)
- 2023年4月 (1)
- 2023年1月 (3)
- 2022年8月 (2)
- 2022年5月 (1)
- 2022年2月 (1)
- 2022年1月 (2)
- 2021年11月 (1)
- 2021年10月 (1)
- 2021年9月 (1)
- 2021年4月 (3)
- 2021年3月 (1)
- 2021年2月 (5)
- 2021年1月 (1)
- 2020年12月 (3)
- 2020年10月 (1)
- 2020年8月 (3)
- 2020年6月 (3)
- 2020年5月 (2)
- 2020年4月 (3)
- 2020年2月 (1)
- 2020年1月 (2)
- 2019年12月 (1)
- 2019年11月 (2)
- 2019年9月 (1)
- 2019年6月 (1)
- 2019年4月 (6)
- 2019年3月 (2)
- 2019年2月 (1)
- 2018年12月 (1)
- 2018年11月 (3)
- 2018年10月 (2)
- 2018年9月 (4)
- 2018年8月 (5)
- 2018年7月 (1)
- 2018年6月 (5)
- 2018年5月 (3)
- 2018年2月 (2)
- 2017年12月 (4)
- 2017年8月 (2)
- 2017年4月 (3)
- 2017年3月 (5)
- 2017年2月 (13)
- 2017年1月 (1)
- 2016年12月 (2)
- 2016年8月 (2)
- 2016年5月 (3)
- 2016年4月 (2)
- 2016年3月 (2)
- 2016年2月 (2)
- 2016年1月 (6)
- 2015年12月 (3)
- 2015年11月 (4)
- 2015年10月 (3)
- 2015年8月 (3)
- 2015年7月 (3)
- 2015年6月 (2)
- 2015年3月 (1)
- 2015年2月 (2)
- 2015年1月 (3)
- 2014年12月 (2)
- 2014年11月 (1)
- 2014年10月 (2)
- 2014年9月 (2)
- 2014年8月 (7)
- 2014年7月 (4)
- 2014年6月 (8)
- 2014年5月 (4)
- 2014年4月 (8)
- 2014年3月 (7)
- 2014年2月 (9)
- 2013年12月 (1)