インテリア、建築に携わるあなたが、今絶対読むべき1冊

今回は、4月26日に書籍『芸術家たち 建築とデザインの巨匠 編』を発売されたばかりの河内タカさんをご紹介いたします。

河内タカさん

河内タカさんは、高校卒業後、サンフランシスコのアートカレッジで学び、卒業後はニューヨークに拠点を移し、
アートや写真に関する展覧会のキュレーションや写真集の編集を数多く手がけられました。

30年に渡ったアメリカでの生活の後、日本に帰国。

現在は、京都に本社を置く便利堂の海外事業部を統括していらっしゃいます。

肉声で語りかけてくれるような文章の魅力

そんな河内さんの、もう一つの顔は執筆家。

日本経済新聞紙の『美の十選』をはじめ、雑誌「and Premium」や「SEIN」(SIGMA) などでコラムを掲載されています。

経済紙から、私も大好きなライフスタイル誌まで、幅広い読者に語りかけられるのが河内さんの文章の魅力です。

実は、河内さんがライターとして活躍するきっかけとなったのが、帰国後に始めたFacebookへの投稿でした。

自己紹介がわりに、アメリカや世界中で自分自身と関わりのあったアーティストについて書き続けた河内さん。それを、毎日のライフワークとしました。

芸術家たち [建築とデザインの巨匠 編]丹下健三 Kenzo Tange 今回イラストも全て描き下ろしとなります by SANDER STUDIO

河内 タカさんの投稿 2019年4月18日木曜日

そんな河内さんの体験が息づいたと肉声のような連載が、書籍として形になったものが『アートの入り口 アメリカ編』、そして『アートの入り口 ヨーロッパ 編』(共に太田出版、2016 年)です。

この2冊の書籍が刊行された際、河内さんに直接お話をお伺いする機会がありました。

お会いした河内さんは、アメリカの空気をそのまま背負って来たかのように、とても気さくでフラットな方で、
拝見していたコラムの文体そのままのような、親しみやすい語りにすっかり引き込まれたことを覚えています。

その時すでに、「アメリカ編」と「ヨーロッパ編」の次は「建築デザイン編」を執筆したいという構想があることをお伺いしていました。

そして今回、あたためた構想を満を持して出版したのが『芸術家たち 建築とデザインの巨匠 編』となります。

『芸術家たち 建築とデザインの巨匠 編』の刊行が決まり、河内さんと再びお会いした時に、
「ここだけの話。これは、まさにALSAのみなさんに向けて作ったようなもんだ!絶対みんな興味あるでしょ。」 とニコニコしながら言われました。

その言葉どおり、この書籍の中には押さえておくべき建築家、デザイナーの巨匠たちがコンパクトに、
けれども濃密に、まるで彼等彼女等が肉声を持っているかのように描かれています。

歴史の中の巨匠をぐっと私たちの身近にしてくれる

話は、また3年前へと遡りますが、『アートの入り口 アメリカ編』、そして『アートの入り口 ヨーロッパ 編』が出版された際に河内さんをお招きした際に、
本の中で取り上げたアーティストたちについて語ってくれ話が、とても印象に残っています。

その時、河内さんが紹介してくれたのは、アルネ・ヤコブセン、フィン・ユール、アルヴァ・アアルト、コルビジュエ、そしてジョージア・オキーフとアルフレッド・スティーグリッツでした。

アルネ・ヤコブセン、フィン・ユール、アルヴァ・アアルト、コルビジュエは今回刊行された『芸術家たち 建築とデザインの巨匠 編』にも取り上げられている、世界的なデザイナー、建築家の巨匠たちです。

ヤコブセンが手掛けた SASロイヤルホテル

アアルトの家とアトリエ

ファン・ユールの家

彼らについては、『芸術家たち 建築とデザインの巨匠 編』の中で、そして、河内さんの口から、きっと素敵なエピソードを語っていただけることでしょう。

ここでは、その時に特に印象的だったジョージア・オキーフとアルフレッド・スティーグリッツのエピソードをご紹介させていただきます。


(左)ジョージア・オキーフと(右)アルフレッド・スティーグリッツ

河内さんの話にぐっと引き込まれる理由の一つに、そのアーティストの紹介だけでなく、
実際に彼等が過ごした部屋・建物から、アーティスト自身を紐解いてくれることが上げられます。

河内さんが良く仰るのは「画家が自画像を描くように、建築家が設計し長く住んだ家は、間違いなく彼らの本質や素顔を最もストレートに表しているはずだ」ということ。

20世紀のアメリカを代表する女性画家、ジョージア・オキーフについても彼女が晩年を過ごしたサンタフェの家からエピソードを紐解いていただきました。

オキーフの家

サンタフェはもともとメキシコ文化の影響が強い土地柄。オキーフの家も漆喰のような壁の作り、木の使い方などメキシコ風の要素がみられます。

周囲が自然に囲まれており、最大限自然光が入るように、オキーフ自身がこの家を設計し、地元の職人たちと一緒に作っていきました。

20世紀のアメリカの女性としては、本当に先進的だったオキーフ。

DIYの先駆けのようなことを行っていたエピソードからも、そんな彼女の人間性が垣間見えます。

そんな彼女の夫が、アメリカ写真界の父とも言えるべき存在アルフレッド・スティーグリッツでした。

スティーグリッツの名前を聞いたことがある方も、きっと多いと思います。

スティーグリッツは妻であるオキーフを30歳から46歳までの16年間取り続け、それが作品集としてまとまっています。

その作品集は、彼女のただのポートレートではなく、写真家であるスティーグリッツの目を通して切り取られた、彼女自身の芸術性そのもののようでもあります。

画家であるオキーフの「手」にスティーグリッツは何よりも注目しました。

顔よりも、手の表情から感情が読み取れると思うくらい、オキーフの手は雄弁です。

スティーグリッツの死後にこの写真はオキーフ自身の手によってまとめられ、出版されることとなりました。

このエピソードに夫婦関係を越えて、芸術家としてお互いをリスペクトし合う、二人の深い絆が感じられ、
史実の中の人に過ぎなかったジョージア・オキーフとアルフレッド・スティーグリッツが、ずっと身近に感じられました。

彼らの作品を見る自分自身のまなざしがこのエピソードを聞く前と後では大きく変化したように思います。


こんな風に、歴史の中の巨匠のことをぐっと私たちの身近にしてくれるのが河内さんの言葉の魔法なのです。

今回の『芸術家たち 建築とデザインの巨匠 編』でも、きっと、ヤコブセン、アアルト、コルビジュエといった巨匠を
親しみ深く、身近にしてくれるに違いありません!

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